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枝が多いほど、羽は邪魔になる――モモンガが夜の森で選んだ移動のかたち
羽があれば有利、とは限らない
空を移動するなら、羽があるほうが上位。つい、そう考えてしまう。
けれど夜の森を思い浮かべると、その常識は少し怪しくなる。暗くて、枝が多くて、まっすぐ進める空間がそもそも少ないからだ。
モモンガは、そのややこしい空間を生きる。見た目は「飛べそう」なのに、実際には鳥のような羽ばたき飛行はしない。
ただ、そのことは飛行の未完成版という意味ではない。飛ぶ・飛べないの二択ではなく、枝のあいだを移る樹上移動の中間解として見ると、この体の設計はかなり合理的に見えてくる。
むしろその中途半端さが、森ではうまく働いているように見える。滑空の雰囲気は、こちらの短い映像でもつかみやすい。

モモンガは空を進むというより、枝の間を落ちながら選んでいる
モモンガの移動は、鳥の飛行とはかなり違う。高い場所から飛び出し、前脚と後脚のあいだの膜を広げて、少しずつ高度を落としながら次の木へ向かう。
空を支配するというより、落下を制御している感じに近い。
このやり方は、短い距離でも行える場合がある。途中では、体や尾を使って進路を調整することが知られている。
実際の滑空の様子を見ると、一直線に飛ぶというより、着地点を読みながら体を使って進路を決めているのが分かる。
【動物】モモンガが滑空するだけの動画【まとめ】Suger Glider
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→https://www.youtube.com/watch?v=YQzXoQPOwrg
◇ED画像引用元
チャンネル名:Beachfront B-Roll: Free Stock Footage
→https://www.youtube.com/watch?v=mnTt0hv22Ts&list=PLido8eCUHMoyuwZKClSxGiN2mmHaMN4n7
◇挿入曲
[MUSIC]
•Artist : Nicolai Heidlas
•Title : Someways (CC BY License 4.0)

枝が混んだ空間では、長い翼幅や大きな翼が制約になりうる
羽ばたいて飛ぶには、揚力だけでなく、羽を十分に動かせる空間がいる。開けた場所ならそれは強い。
だが枝や葉が重なる森では、長い翼幅や大きな翼は、条件によっては取り回しの制約になりうる。
特に夜の移動では、見えている余白が少ない。そうした環境では、遠くまで飛ぶ力よりも、狭い空間での制御性が重要だった可能性がある。
モモンガの膜は体の輪郭に沿って広がるので、使わないときは体側にたたまれ、跳ぶ・登る・しがみつくといった樹上移動を続けられる。
哺乳類の滑空について整理した概説としては、ブリタニカの flying squirrel の項目が参考になる。
https://www.britannica.com/animal/flying-squirrel
滑空膜は展開と収納を伴い、樹上移動との切り替えができる
モモンガの利点は、速く飛ぶことではない。むしろ、飛び出す瞬間に広げ、着地の直前に姿勢を変え、枝に触れるとすぐに「登る体」に戻れることにある。
滑空膜は飛行専用の大がかりな装置というより、移動モードを切り替えるための薄い拡張に見える。
この切り替えは、夜の森での移動を考えるうえでも示唆的だ。着地前に姿勢を変えて減速し、幹や枝に着地することが観察されている。
飼育下の話ではあるが、滑空が常時必要な運動ではなく、状況に応じて起きる移動手段だという説明も、この性格をよく表している。
最近よくいただくご質問のひとつに、
「フクロモモンガは滑空する動物だから、飼育下でも滑空させた方がいいの?」というものがあります。
結論からお伝えすると、
無理に滑空させる必要はありません。
■ 野生で滑空する理由
フクロモモンガが野生で滑空するのは、
・天敵から逃げるため
・効率よく餌場へ移動するため
といった、生きるための手段です。滑空は「楽しい遊び」ではなく、生活に必要な移動手段のひとつという位置づけになります。
■ 飼育下で滑空は必要?
飼育環境では、
・餌は確保されている
・天敵もいない
ため、滑空をしなくても生活上の問題は一切ありません。
また、無理に滑空をさせることで
・着地の失敗によるケガ
・パニックによる事故
などのリスクがあるため、運動目的での滑空は基本的におすすめしない場合もございます。
■ モモンガに必要な運動とは?
フクロモモンガにとって重要なのは、
👉 上下運動(登る・降りる動き)
です。
そのため、
・高さのあるケージ
・しっかりした足場(ステップや爪とぎ)
・部屋んぽや服んぽ、蚊帳んぽ(安全な環境での運動)
といった環境づくりの方が、はるかに重要で効果的な運動になります。
■ 滑空は「させるもの」ではなく「起きるもの」
モモンガ自身が
・高い場所から移動したい
・気分転換したい
と感じたときに、自然に滑空することはあります。
このような場合は問題ありませんが、 滑空しない=ストレスになることはありません。
■ 例外
トレーニングとしての滑空(手に戻る練習など)は可能ですが、
これは
・脱走時などの緊急対策
・飼い主とのちょっと高度なコミュニケーション
などが目的になります。
必須ではなく、必要に応じて行う程度で問題ありません。
【まとめ】
・滑空は“必須の運動”ではない
・無理にさせると事故リスクあり
・重要なのは上下運動と環境設計
・滑空は本人の意思に任せるのがベスト
フクロモモンガの飼育で大切なのは、
「見た目のイメージ」ではなく、本来の行動と目的を理解することです。
ぜひ安全でストレスの少ない環境づくりを意識してあげてください。
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高い木が連続する森林では、滑空による木間移動が成立しやすい
モモンガの滑空は、木が高く、しかも完全には離れすぎていない環境でよく効く。高さは位置エネルギーになるし、隣の木までの距離が適度なら、羽ばたかなくても十分に渡れる。
つまり必要なのは大空ではなく、樹冠が連続する立体の通路だ。
ここで面白いのは、森が混んでいること自体が障害であると同時に、滑空を成立させる条件にもなっている点だ。
地面に降りる機会を減らすことは、地上性捕食者への曝露を下げる可能性があるが、それ以上に重要なのは、枝と枝の「あいだ」が細かく用意されていることかもしれない。
森林性の滑空哺乳類の生態を概観する入り口としては、スミソニアンの flying squirrels 紹介も読みやすい。
モモンガが広がれたのは、飛べなかったからではなく、森の混み方に合っていたからかもしれない
モモンガを見ると、つい「もう少しで飛べそうなのに」と思う。けれど夜の森では、その“もう少し”が必須ではなかったのかもしれない。
むしろ、飛びすぎないこと、広げすぎないこと、落ちながら選べることのほうが役に立った可能性がある。
滑空膜は羽の未完成版ではない。枝の多い空間で、木から木へ移ることに適した形だった可能性がある。
森林環境との適合が、モモンガ類の存続や分布に寄与した可能性がある。そう考えると、あの膜は「飛べない証拠」ではなく、森林の枝間移動に適した設計として読める。
分類や分布の基礎情報は、最後に IUCN SSC の概説も確認しておくと全体像がつかみやすい。