ハリモグラの赤ちゃんはどこからミルクを飲むのか――乳首がないまま子育てできる理由

Creatures You Didn’t Expect

乳首がないのに、ハリモグラはどうやって赤ちゃんに授乳するのか

哺乳類の赤ちゃんは乳首に吸いついて育つ。そう思っていると、ハリモグラの子育てには少し驚かされる。卵を産むだけでも意外なのに、そのうえ乳首がないからだ。

けれどハリモグラは、卵生、授乳、そして袋状の育児をきちんと両立している。だからこそ「哺乳類なのに乳首がないのはなぜ成り立つのか」という疑問は、単なる珍しさではなく、哺乳類のはじまりに近い子育ての形を考える入口になる。

では、卵から孵った子はどこからミルクを受け取るのか。母親の腹側にある乳腺の開口部や、その周辺の乳腺野(乳腺パッチ)に分泌された母乳を、子は口で受け取る。

実際の姿を先に見ておくと、体つきや動きの独特さがつかみやすい。まずは映像で、この生き物の“普通ではなさ”に触れてみると入りやすい。

卵を産み、母乳で育てる単孔類だからこそ見えてくること

ハリモグラは単孔類というグループに属する。現生の単孔類はカモノハシとハリモグラのなかまだけで、哺乳類の中でも早い段階で他系統と分岐した現生系統として知られている。

ここで面白いのは、「卵を産む」と「母乳で育てる」が同じ動物の中に並んでいることだ。卵は鳥や爬虫類、母乳は哺乳類、と分けて考えがちだが、ハリモグラはその境目が思うほど固くないことを見せてくれる。

繁殖や育児の流れをつかむなら、Australian Museumの解説がわかりやすい。図鑑的な情報だけでなく、生活の流れとして読めるのがよい。

ミルクは乳首ではなく、皮膚の表面ににじみ出る

ハリモグラには乳首がない。その代わり、乳腺がつながる皮膚の範囲から母乳が分泌される。いわば“乳腺パッチ”のような場所から、ミルクがにじみ出る仕組みになっている。

子は孵化したあと、母親の繁殖期に形成される一時的な育児嚢(袋状のくぼみ)内などで、この分泌されたミルクを受け取る。卵生で生まれたばかりの未熟な子でも栄養を得られるよう、授乳の形もそれに合っている。

この授乳法は、乳首がないから不便というより、こうした未熟な子の育児と両立してきた方式と考えられている。単孔類の乳では、抗菌性をもつ成分が研究されていて、育児上の役割も示唆されている。

https://www.monash.edu/discovery-institute/news-and-events/news/2020-articles/monotreme-milk-could-hold-key-to-fighting-superbugs

赤ちゃんがとても未熟だから、袋状の育児とこの授乳法が成り立つ

ハリモグラの赤ちゃんは、卵からかえった時点ではとても未熟だ。棘はまだ目立たず、体はやわらかく、自力でできることもほとんどない。

だからこそ、母親の体の近くですぐ栄養を受け取れることが重要になる。乳首にしがみつく方式はわかりやすいが、実は赤ちゃん側にも口の形や吸う力、姿勢を保つ力が必要になる。

その点、皮膚表面ににじんだミルクを受け取るやり方は、未熟な子にも授乳できる方式として理解されることが多い。単孔類としての特徴を平易に確認する補助線として、San Diego Zooの解説も読みやすい。

乳首がないのは、哺乳類として中途半端だからではない

ここでつい、「進化の途中だから」と言いたくなる。けれど、その言い方では少し雑になる。進化は一直線に完成へ向かうものではないからだ。

単孔類の系統では、卵を産み、未熟な子を保護し、皮膚から分泌するミルクで育てる方法が、長い時間の中で成立してきた。乳首がないのは不完全だからではなく、その繁殖様式でも維持されてきたと考えられる。

進化史の位置づけをもう少し確かめるなら、一般向けの信頼できる図鑑や博物館の解説をあわせて読むとよい。単孔類が哺乳類の中でどこにいるかを見ると、“例外”というより“古い枝が今も続いている”感覚がつかみやすい。

ハリモグラの子育ては、哺乳類の初期進化を考える手がかりになる

ハリモグラを見ていると、哺乳類らしさとは何かが少し揺らぐ。胎盤があることでも、乳首があることでもなく、もっと根っこの部分、つまり母乳で子を育てるという機能そのものが核にあると見えてくる。

卵を産む。乳首はない。それでも母乳で育てる。さらに、繁殖期には袋状の育児の場まで使う。ハリモグラの子育ては、哺乳類の常識を壊すというより、その輪郭を広げる。

この違和感は、哺乳類の例外を見ているからではない。むしろ、哺乳類の初期段階を思わせる特徴をもつために生まれる違和感なのだろう。

最後に基礎情報を確認する入口としては、Britannicaの解説も参照しやすい。読後に事実関係を整理したいときに使いやすい。ここから単孔類や哺乳類進化の入門的な研究紹介、関連書籍へと読み広げていくと、この不思議さが一時の驚きではなく、進化の見方そのものを変える話だとわかってくる。

https://www.britannica.com/animal/echidna-monotreme

このページの内容
乳首がないのに、ハリモグラはどうやって赤ちゃんに授乳するのか
卵を産み、母乳で育てる単孔類だからこそ見えてくること
ミルクは乳首ではなく、皮膚の表面ににじみ出る
赤ちゃんがとても未熟だから、袋状の育児とこの授乳法が成り立つ
乳首がないのは、哺乳類として中途半端だからではない
ハリモグラの子育ては、哺乳類の初期進化を考える手がかりになる