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「高いのに選ばれる」はどう作る?湖池屋プライドポテトに学ぶ、価格比較を外すリニューアル発想
なぜ「少し高い」のに、湖池屋プライドポテトは選ばれるのか
スーパーやコンビニの棚でお菓子を選ぶとき、多くの人は無意識に価格を比べています。とくにポテトチップスのような定番カテゴリでは、「だいたいこのくらいの値段」という相場観が強く働くため、普通なら少し高い商品はその時点で不利です。
それでも湖池屋プライドポテトは、「高いからやめておこう」だけでは片づけられない存在感があるように見えます。面白いのは、単に高級感を演出したのではなく、リニューアルのたびに比較される基準そのものを少しずつずらしてきたことです。
近年の公式情報や発信内容を見ると、商品名、パッケージ、原料や製法の語り方に“誇り”を前面に出していることがうかがえます。
初心者マーケターがここから学ぶべきなのは、「高い理由を説明する」だけでは弱いという点です。もっと重要なのは、消費者に「これはいつものポテチと同じ見方をする商品ではない」と思ってもらう再設計です。
価格より先に設計すべきなのは「何と比較されるか」
マーケティングで価格の話になると、つい「いくらなら売れるか」に意識が向きがちです。ですが実際には、価格は単独で評価されるものではありません。消費者はいつも、「何と比べるか」の中で値段を判断しています。
たとえば100円台のポテトチップスと比較されれば高く見えても、「ちょっと良い間食」や「気分転換のためのご褒美スナック」と比較されれば、見え方が変わる可能性があります。効いてくるのは価格の絶対額よりも、比較対象の設定である場合があります。
ブランド戦略の基本を学ぶうえでは、ポジショニングの考え方が参考になります。STPや差別化の基本を押さえる入口として、日本マーケティング協会の情報も見ておくと整理しやすいでしょう。
プライドポテトの示唆はここにあります。「安いポテチの上位版」として戦うのではなく、「こだわりがあり、選ぶ理由があるスナック」へと土俵を動かそうとしているように読み取れます。だからこそ、単純な価格比較から外れやすくなる可能性があります。
「ただ新しくしただけ」で終わらせないために、情報の束ごと更新する
“別物感”は、味を少し変えただけでは生まれません。重要なのは、消費者が受け取る情報の束をまとめて更新することです。プライドポテトは、ネーミング、パッケージ、フレーバーの表現、素材や製法の語り方を組み合わせ、「これはメーカーの自信作だ」と感じさせる物語を作ってきました。
たとえばパッケージデザインの刷新は、中身の説明以上に大きな役割を持ちます。売り場では商品を見る時間が短い場合も多く、最初に受け取るのは機能よりも印象になりやすいからです。
視覚設計は価格受容に影響する可能性があるとされ、ブランディングやパッケージの文脈でも論じられています。
ここで初心者が誤解しやすいのは、「高級そうに見せればよい」という理解です。実際にはそれだけでは足りません。高級感よりも大切なのは、「いままでの選び方では測れない」と感じさせる再編集です。
名前、見た目、コピー、味名の付け方まで一貫して変わるからこそ、消費者は“いつもの棚比較”を一度止めます。
“別物感”のあるリニューアルが、価格の見え方を変える
リニューアルというと、多くの企業は「少し良くしました」で終わりがちです。しかしその伝え方では、消費者は旧商品や競合商品と横並びで比べ続けます。すると結局、「で、前よりいくら高いのか」という見方から抜け出せません。
一方で、“別物感”のあるリニューアルは比較の起点を変えます。コピーの語彙、シリーズの世界観、味の見せ方、商品の写真の扱いまで変わると、「改良版」ではなく「新しい選択肢」として認識されやすくなります。
湖池屋のニュースリリースを見ると、節目ごとにコンセプトや訴求軸の出し方を更新しているように見えます。

この考え方は食品以外にも応用できます。たとえばコーヒーなら「苦味が増した」ではなく「夜のリラックス時間のための一杯」に変える。洗剤なら「洗浄力アップ」ではなく「部屋干しストレスを減らす専用品」として見せる、という発想です。
性能差だけでなく、解決する場面ごと再定義すると、価格比較の基準が少しずつずれやすくなる可能性があります。
自社商品に応用するなら、リニューアル時に見直すべき4点
応用のコツは、最初に値段をいじることではなく、「何の商品として記憶されたいか」を決めることです。ここが曖昧なままだと、パッケージを変えてもコピーを整えても、結局は安い競合との比較に戻ってしまいます。
実務では、次の4点をセットで見直すと効果が期待しやすくなります。
- 商品名:機能名ではなく、選ぶ意味が伝わるか
- パッケージ:売り場で一瞬で“別枠感”が出るか
- ベネフィット:性能ではなく、どんな気分や場面を得られるか
- リニューアル理由:企業都合ではなく、顧客視点の再定義になっているか
たとえば地方の菓子メーカーなら、「素材にこだわりました」だけでは弱いかもしれません。そこを「旅の帰りに買う土産菓子」ではなく、「自宅で旅気分を再生する一品」に言い換えると、比較対象が一般的なおやつから少し離れます。
ポジショニングマップの考え方は実務でも役立ちます。基礎を押さえるなら、STPや差別化の基本とあわせて整理すると理解しやすいでしょう。
値下げせず選ばれる存在にするための最終チェック
最後に大事なのは、「価格に見合う価値がある」と説明することではなく、「そもそも同じものとして比べられない状態を作れているか」を点検することです。プライドポテトの事例からは、価格プレミアムは結果であって、出発点ではないと解釈できる側面があります。
チェックポイントをまとめると、次の通りです。
- 競合より高い理由ではなく、競合と違う選び方を提示できているか
- リニューアルが改良告知で終わらず、再定義になっているか
- 名前、見た目、言葉、売り場印象が同じ方向を向いているか
- 一度食べて終わりではなく、指名買いしたくなる物語があるか
価格競争を抜けたい商品ほど、値引きの前に“比較され方の設計”を見直すべきです。高いのに選ばれる商品は、魔法のように生まれるわけではありません。消費者の頭の中で、「これは同じ棚にあっても、同じ基準では選ばない」と思わせる編集力から生まれます。
次に自社商品をリニューアルするときは、まず「この商品は何円なら売れるか」ではなく、「この商品は誰の、どんな選び方に入り込むのか」から考えてみてください。そして、“ただ新しくしただけ”で終わらせないために、差別化要素を1つ先に決めることが重要です。その順番が変わるだけで、リニューアルの打ち手はかなり変わります。
