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カルビー『堅あげポテト』はなぜ“万人受け”を捨てても定番になれたのか
カルビー『堅あげポテト』が崩す「定番=万人向け」という思い込み
新商品や定番商品を考えるとき、初心者ほど「できるだけ多くの人に好かれる方が有利」と考えがちです。新規層を取りたい一方で、既存ファン向けの尖りを弱めるべきか迷う場面も少なくありません。
たしかに間口を広げれば、最初の接触人数は増えます。
ただ、広げすぎた訴求は印象を薄くし、似た商品との違いまで見えにくくします。定番になるには無難であるべきだ、という発想は、実は思っている以上に強い思い込みです。
そこで面白いのが『堅あげポテト』です。軽さや食べやすさを極端に追わず、あえて堅い食感と噛みごたえを前面に出しました。
カルビーの商品情報の現在の公式表現を見ると、ブランドの核が「噛むほどうまい」に置かれていることが分かります。
この事例は、「定番になるには無難であるべき」という考えを崩してくれます。むしろ市場によっては、少し尖った個性の方が強く記憶に残ります。
現在のブランド発信でも、この独特の食感体験が一貫して語られています。商品そのものの特徴を伝えている点も見逃せません。
『堅あげポテト』は、なぜターゲットを広げすぎないのか
『堅あげポテト』の狭さは、単に味が濃いとか高級感があるという話ではありません。いちばん大きいのは、食感に対する割り切りです。
一般的なポテトチップスに比べると、「少し堅い」「しっかり噛む」という体験をブランドの中心に置いた点が独特でした。
これは裏を返すと、全員にとって食べやすい設計ではないとも読めます。子ども向けの軽快さや、ながら食べのしやすさよりも、「今この食感を味わいたい」という欲求を優先する商品として位置づけられます。
商品パッケージや販促の多くでも、軽快さより“噛みしめる満足感”が印象づけられています。フレーバー紹介にも、そうした方向性が見られます。
つまり『堅あげポテト』は、ポテトチップスという広いカテゴリーの中で、「どんな場面でも無難に選ばれる存在」ではなく、「この食感が欲しい時に真っ先に思い出される存在」を狙っているのです。
市場全体を取りにいくのではなく、選ばれる理由を濃くしている。このポジショニングは、ターゲットを広げずに売上を伸ばすブランドの保ち方を考えるうえで、初心者にとって学びが大きいポイントです。
“好きな人にはたまらない”が売上の土台になる理由
マーケティングでは、好意の広さだけでなく、好意の深さも重要です。なんとなく嫌われない商品は、なんとなく選ばれもしません。
一方で、特定の人に「これじゃないと物足りない」と思わせる商品は、リピートや指名買いが起きやすくなります。
『堅あげポテト』はその典型と考えられます。噛みごたえの強さが記憶に残りやすく、他の商品では代替されにくい状態をつくると考えられます。
初心者向けに言い換えるなら、「買う理由がはっきりしている商品」だと言えます。カルビーの企業情報やブランド発信を見ると、ブランドらしさを継続的に育てようとする姿勢が感じられます。
たとえばカフェでコーヒーを選ぶ時も、「誰でも飲みやすい一杯」より、「苦みが強いこの店のブレンドが好き」と感じる人の方が再来店しやすいものです。
それと同じで、狭い嗜好を残すことは、ファンの強度を高める行為でもあります。SNS上での継続的な会話も、ブランドとの接点を保つ参考になります。
広げすぎないのに定番として棚に残るブランドの条件
ただし、尖っていれば何でも定番になるわけではありません。『堅あげポテト』が現在も継続して展開されている点を踏まえると、尖りと分かりやすさの両立が定番化の一因と考えられます。
「堅い食感」「噛むほどおいしい」という中心価値がシンプルで、初めて見る人にも伝わりやすい。この分かりやすさは、定番化に欠かせない要素です。
さらに重要なのは、尖り方が“理解不能な奇抜さ”ではないことです。ポテトチップスとしての基本的なおいしさは守りながら、食感だけを強く特徴化しているのです。
つまり、カテゴリーから外れすぎず、でも埋もれない位置を取っている。店頭でのブランド認知やロングセラーの文脈を考える時は、業界メディアの視点も参考になります。

初心者向けに整理すると、棚に残る条件は次の3つです。
- 一言で説明できる個性がある
- その個性が体験として本当に感じられる
- 個性が強くても、カテゴリーの基本期待は裏切らない
この3つが揃うと、「人を選ぶ」のに「選ばれる頻度は高い」という状態が生まれます。商品の差別化を学ぶなら、店頭のパッケージ比較や商品情報の観察も材料になります。
自社商品で“削ってはいけない尖り”を1つ決める考え方
この事例を自分の企画に応用するなら、最初に「誰にでも好かれる要素」を足すのではなく、「何を削らず残すべきか」を考えると整理しやすくなります。
『堅あげポテト』なら、それが“堅さ”でした。もしここを弱めていたら、別のポテトチップスとの違いはかなり薄れていたはずです。
実務では、次の順番で考えると組み立てやすくなります。
- いちばん熱く支持してほしい人を決める
- その人が反応する感覚や不満を特定する
- そこに関係ない“万人向け要素”をむやみに足さない
- 一言で伝わる価値に言語化する
たとえば飲料なら「強炭酸すぎるくらいが好きな人」、アプリなら「最短操作だけを求める人」に寄せる発想です。STPやポジショニングの基礎を学びたい人は、業界団体の解説を入口にするのも有効です。
狭い嗜好を残すのは、顧客を切り捨てることではありません。むしろ「誰のための商品か」を明確にし、その人に選ばれる確率を上げる考え方です。
ブランド戦略を学ぶ動画教材や公開講義を合わせて見ると、理解はさらに深まります。
“全員に好かれる”より“忘れられない”を目指す
『堅あげポテト』の強さは、狭い嗜好を残したまま、それを分かりやすい価値として育てた点にあります。定番化とは、単に最大公約数を取りにいくことではありません。
「この商品ならでは」の理由を保ちながら、何度も選ばれる状態をつくることです。そこに、定番とブランドが両立する余地があります。
マーケティング初心者にとって、この事例はとても実用的です。差別化は派手な新しさではなく、“消してはいけない特徴”を守ることから始まります。
もし企画で迷ったら、まずは自社商品の“削ってはいけない尖り”を1つ決めてください。
そのうえで、「もっと広げる」前に、「この商品の核は何か」を先に言葉にしてみてください。
その問いに明確に答えられる商品は、たとえ万人向けでなくても、長く強く愛される可能性があります。ブランドづくりの出発点は、全員に好かれることより、誰かに強く必要とされることなのです。

