PTXでCUDA不要?DeepSeekが切り開く新たなAI開発手法とNvidiaの株価の行方

Higtyのシステムの作り方

1. CUDAとは?

NvidiaのGPUを活用してAIや科学技術計算を行う際、多くの人が使っているのがCUDAという開発用のプラットフォームです。CUDAを使うと、GPUを効率的に動かせるライブラリや開発環境がそろっているため、プログラミングが比較的容易になります。

NvidiaにとってCUDAは「独自エコシステムの中心」とも言える存在で、世界中の研究者や企業がCUDAを使うことで、NvidiaのGPUが事実上の業界標準になってきました。


2. PTXとは何か?

一方、**PTX(Parallel Thread Execution)**は、NvidiaのGPU上で動くプログラムを表す「中間言語(アセンブラのようなもの)」です。通常は、開発者がCUDAで書いたプログラムがコンパイルされ、GPUが理解できるPTXコードに変換されて実行されます。


つまり、PTX自体もNvidiaの技術なのですが、本来はCUDAを通して使われるもの。しかし今回、中国のDeepSeekのように、CUDAを経由せずに直接PTXを扱う(もしくはPTXに近い層で制御する)アプローチが注目されています。


3. なぜCUDAを回避するのか?

CUDAは非常に便利な反面、「Nvidiaの提供する環境」に縛られるという面があります。通常はNvidiaの最新GPUを正規ルートで購入し、CUDAによる開発ツールを使い、Nvidiaのドライバ環境を整える――というのが当たり前の流れです。

しかし、何らかの事情で正規ライセンスや環境にアクセスしにくい場合や、GPUをさらに低レベルで高度なチューニングを行いたい場合、PTXレイヤーを直接触ることで「CUDAがなくてもGPUを使える」という可能性が生まれてきます。


例えば、中国企業が輸出規制などで公式のCUDAサポートを得にくい状況になったとき、PTXを直接いじることで回避できるかもしれません。あるいは、オープンソースコミュニティが「もっと細かい最適化をして高速化したい」として、PTXを使うアプローチを研究することもあり得ます。


4. Nvidiaエコシステムへの影響――“ロックイン”が揺らぐリスク

4-1. ソフトウェア依存の低下

NvidiaにとってCUDAは、ユーザーを強く引きつける大きな魅力(いわゆるロックイン要素)でした。大量のドキュメントやサポート、エコシステムが整備されているため、新規参入者(他のGPUメーカーなど)が追いつくのは簡単ではありません。

しかし、もし多くの開発者が「CUDAを使わなくても、PTXベースで直接開発できる」技術を習得すると、Nvidiaのソフトウェア優位性がやや薄れる可能性があります。


4-2. ハードウェア依存は残る?

とはいえ、PTXはNvidiaのGPU向けの中間言語なので、「Nvidia製GPUなしでPTXを使う」というわけにはいきません。ハードウェアとしては依然としてNvidiaに頼ることになるので、完全にNvidia離れが進むわけではないという見方もあります。


5. 今後のシナリオ――オープンソース化と競合の動き

オープンソースコミュニティの活発化


既にAIフレームワーク(PyTorchやTensorFlowなど)はNvidia製GPUが前提の最適化を数多く取り込んでいますが、CUDAを必要としない低レベル層の利用方法が広まると、新しいフレームワークやコンパイラが登場するかもしれません。

これにより一部の開発者はCUDAに依存しない選択肢を得られる可能性があります。

他GPUベンダーとの競争激化


仮にPTX以外にも「ハードウェアに近いレイヤーで直接制御できる仕組み」が普及すれば、AMDやIntel、あるいはAppleや中国メーカーが独自GPUを売り込む余地が広がります。

Nvidiaのソフトウェア面の強み(CUDA)への依存が下がれば、価格面や性能面で魅力が出てくる他社GPUへの乗り換えも進むかもしれません。

Nvidiaによる新たな囲い込み策


一方、Nvidiaも黙って見ているわけではないでしょう。より高度なライブラリ(cuDNNやTensorRTなど)を強化し、“CUDA以外では得られないメリット”をアピールするはずです。

また、PTXに対して何らかのライセンスや制限を加える可能性も考えられます。

6. 結論――完全な脱CUDAは難しいが「選択肢の増加」は加速する

現時点では、PTXがあるからといってNvidiaのエコシステム需要が大幅に減るとは断言しづらい状況です。なぜなら、PTX自体がNvidiaのGPU向けの技術であり、結局はNvidia製ハードウェアを使う必要があるからです。


ただし、CUDAというソフトウェアレイヤーに依存しない開発手法が注目されることで、「NvidiaはGPUのみならずソフトウェア面でも必須」という認識が揺らぎ始めるリスクは十分にあります。中国企業に限らず、オープンソースのコミュニティや他のGPUメーカーが「CUDAを回避しながらも高性能を引き出す」取り組みを続ければ、長期的にはNvidiaの“完全独占”が崩れていく可能性もゼロではありません。


Nvidia自身も膨大なリソースを投じてイノベーションを進めていますし、最終的には「Nvidiaの高品質・高速なライブラリを使うメリット」VS「CUDAロックインからの解放とコスト削減」という天秤がユーザー企業や開発者の間で働くようになるでしょう。いずれにしても、今回のDeepSeekの事例は**「制約によって生まれる新たなイノベーション」**の一例として、これからのGPU・AIソフトウェア市場に大きな影響を与える可能性があります。